神様のくれた羽根

 フローズンという女の子がいました。フローズンは雪の日に生まれたと言うのがよく分かるような、白く透き通った肌をしていて、小さくてかわいい女の子です。でもフローズンは、自分のことがあまり好きではありません。外で遊んでる子供たちは、フローズンだけ仲間に入れてくれません。それは、フローズンには羽根があるからなのです。いつもフローズンは、ままにお願いしていました。
「ままにはないのに、なぜフローズンには羽根があるの?
 まま、フローズンの羽根を取って。」
 ままはいつも困ってしまいます。  フローズンはちゃんとままの産んだ子です。けれどなぜか、フローズンには羽根がありました。お医者さんにいっても、なぜだか分かりません。ただままにはとっても大切な子供で、天使のような子でした。
 フローズンがよく遊ぶ公園は、丘の上にあってみんなが遊ぶのを、よく眺めているところです。有名な人がくるとみんなが集まる舞台がありました。フローズンはそこが大好きです。みんなが笑って、フローズンを嫌がる人は誰もいないからです。そして、舞台の上に行くと少し勇気が出てきます。
「ここにいれば、みんなもっと笑って、一緒に遊んでくれるかもしれない。」
 いつもそう思ってフローズンは、羽根をパタパタさせていました。
 そこに今日は、ひとりの女の子が、遠くから眺めていました。若葉ちゃんと言う女の子です。若葉ちゃんは、おととい引っ越してきました。元気な女の子だけれど、なかなかみんなと仲良く遊べません。そこで丘の上の公園にやってきたのです。
「こんにちはっ」
 にっこり笑う若葉ちゃんに、ひとりのフローズンはびっくりしました。
「わたしの名前は若葉っていうの」
 フローズンはびっくりしたままうなずくしかできません。
「おなまえは?」
「・・・フローズン」
「それ、キレイだね。フローズンちゃんにあっていいな。」
 フローズンの羽根をキレイと言って、そばにきてくれる子はいませんでした。羽根がきらいだったのに、若葉ちゃんはキレイと言います。
「ほしいの?あげるよ。」
「若葉にはきれいな風にできないよ。フローズンちゃんだからきれいなの。」
「きれい?フローズンはきらい」
「なんで?」
「だって、遊んでもらえないもの。お友達もいない。」
「じゃあ、若葉がお友達だよ。だからいらないって言わないで。」
 フローズンはほんの少し、嬉しくなりました。お友達もできて、きらいな羽根も好きになれそうです。
「フローズンちゃんはかわいいし、きれいなの持ってるしいいよ。若葉にはないもん」
「なんで若葉ちゃんには、ないんだろう?」
「フローズンちゃんは特別なんだよ!わかった、天使なんだっ!」
 家に帰ってままに、フローズンが特別と言われたこと、お友達ができたこと、たくさん話しました。ままは驚いていましたが、とても嬉しい顔をしています。フローズンも早く次の日がきてほしくて、早く若葉ちゃんと会いたくて、ドキドキしながら眠りました。

 まいにち毎日、若葉ちゃんとフローズンは舞台で遊んでいました。おままごとをしたり、お歌を唄ったり、たまには羽根をパタパタさせてみたり。
 けれどある日、いじめっ子の男の子が、フローズンの羽根がおかしいといって、子分をたくさんつれていじめにきました。フローズンはいやだなぁと黙っていましたが、若葉ちゃんは元気のいい子です。いじめっ子たちに、フローズンの羽根がきれいだと言い返しました。いじめっ子たちは怒って、若葉ちゃんの髪の毛を引っ張り、突き飛ばしました。それを合図にフローズンの羽根を引っ張ったり、ぶったり。フローズンはやり返しませんでしたが、若葉ちゃんは必死になってやり返します。一番偉そうないじめっ子に、若葉ちゃんがかみつくと、かみつかれた子は泣いて家に帰ってしまいました。いじめっ子たちも一気にいなくなりました。
「やっつけちゃったね!」
 2人とも、なんだかにっこりです。

 傷だらけで帰ったフローズンと若葉ちゃんは、たくさんままに怒られて、次の日から遊べなくなりました。若葉ちゃんは、フローズンと2度と遊んじゃいけませんと、たくさんままに怒られました。フローズンはもう一度若葉ちゃんと遊びたくて、あの丘の上の公園に行きます。雨の日も、風の日も、雪の日も、公園に行って羽根をパタパタさせて、若葉ちゃんを待っています。でも、若葉ちゃんがくることはありませんでした。

 雨の中、若葉ちゃんを待ってたフローズンは、熱を出してしまいました。とても高い熱です。フローズンの熱が上がると共に、どんどん寒くなり、雨は雪になりました。雪だるまを作ってる若葉ちゃんの横を、氷が足りなくなって、お店に買いに行くフローズンのままが通りました。フローズンが熱だと知った若葉ちゃんは、ままとの約束を破りフローズンのおうちに、お見舞いに行くことにしました。とっても苦しんでるフローズンが目を覚ますと、若葉ちゃんがいます。
「元気になってね。また遊ぼう!」
 若葉ちゃんは、ぽろぽろと泣いています。
 するとフローズンのまわりを、まぶしい光が包みました。

 光の中から神様が現れました。 「フローズン、よくがんばったね。」
 そう言って神様は、フローズンの背中の羽根を誰にも見えないようにしてくれました。けれどキレイと言ってくれた若葉ちゃんと、フローズンの2人には見えます。2人だけのヒミツの羽根にしてくれました。

 神様がいなくなると、まぶしい光もなくなり、フローズンの体から羽根がなくなって、ままはびっくりでした。  それから驚くほどに熱は下がり、羽根の見えなくなったフローズンは若葉ちゃんのおうちへ遊びに行き、若葉ちゃんのままに、もう1度遊べるようにお願いしました。若葉ちゃんのままは、もう、ケンカはしちゃいけないと約束して、遊んでもいいことにしてくれました。

 2人はずっと仲良しです。けれど大きくなったらフローズンにも、若葉ちゃんにも羽根は見えなくなってしまいました。羽根は小さな天使にしかない、秘密のものです。若葉ちゃんは気付かなくても、きっと羽根があって
、それはままには見えていたのかもしれません。